ワルシャワ後記
睦美・寧呂 DUET公演 「今宵かぎりは・・・」ワルシャワ公演のこと
この作品は、日本で3度上演しました。 睦美・寧呂、なけなしの一本です。 しかし、作品が出来上がったから、「よし、次はワルシャワだ!」というようなことでは決してなかった。日本で3度舞台にかけても、自分達のDUETが踊れなかった。 だからこそ、ワルシャワに賭けた。 と、今なら言える。
劇場は、ワルシャワ市街の川向こうのプラガ地区にある、Scena Lubelska。80人も入れば超満員の小さな劇場だけど、
そこには尊敬する最高の先輩達がいて、肌で感じる劇場自体の経験値が、僕らのハラを決めさせた。
無名の僕らがヨーロッパデビューするにはお誂え向きのIndependent Theater。限られた準備時間の中で奇跡を起すには、
この人達とこの劇場しかなかった。
舞台袖で幕が開くのを待ってる時、走馬灯が巡った。 今までの人生の断片がいろいろな人の顔と一緒に浮かんできた。 その全部が背中を押してくれた。 そしてその全部を背負って、ふたりぼっち、照明の中へ、息合わせて一歩。
これは、狂人と死者の踊り 悲しすぎて狂ってしまった愛の夢 生者は死者に息吹き込むように、死者は生者を愛しむように さまよう魂 立ち尽くす魂 聖チェチーリアの像 ひとつだけ、ここにいることは信じている 本当の最後 死者が立ち上がる 誰もが愛する人を思うように 死者を踊らせるたった6分間の愛の夢 永遠の6分間 最大の幸福、あなたを忘れない
兄弟子田中誠司とこの作品を作る中で書き付けた言葉。 本番の日の朝まで話してくれた。
最後の曲は、ショパン、ノクターン第11番
大切な曲だけど、ずっと踊れなかった。
あの夜、二人がそれぞれに辿ってきた人生が、作品を通して一点で交わった。
互いを全身全霊で感じあう喜びが、空間に溢れていく ありがとう、ありがとう 二人で踊った。 愛のDUET。
僕らの踊りを観たことの無かった、ポーランドの観客。 美しい人達。 何かが生まれるとき、必ずだれかが見守ってくれている。 辛抱強く、信じて観つづけてくれた。 どれだけ助けられたことか。
そしてこの公演を実現するために、惜しみなく時間と労力を使ってくださった全ての方々に深く感謝します。 ありがとうございました。
2016年4月1日 DUET 睦美・寧呂
睦美・寧呂 デュエット公演 「今宵かぎりは・・・/Dziś wieczorem, albo nigdy」
2016年3月4日,5日 19:00開演 劇場:Scena Lubelska
出演 睦美・寧呂
音響 石原耒 照明 Darek Kunowski staff Anna Ishihara, Kinga Krynka Cortez,Leszek Paliński(photo) 宣伝美術 山田知子 宣伝写真 鈴木育郎 Special Thanks 田中誠司 オーガナイズ 十六夜舞踊団(IZAYOI DANCE TROUPE) 協力 Scena Lubelska, teatr REMUS, BUTOHSFERA,pompka